仮にシュミットトリガタイプの入力を使っても、非同期系から同期系への入力の部分では、セットアップタイムまたはホールドタイムを満たさない信号を100%防ぐことはできない(が、異常を起こさない確率を現実的に十分なものにすることはできるので、必ずそうすべき)、という注意は、アナログ系も視野に入れている説明では見るように思うものの、コンピュータの話ではやはり多くは見かけられないように思う。
が、先日、『ファインマン計算機科学』(FLoC)にこれに関する言及を見かけた。少し長くなるが段落ごと引用する。
興味深いことに,少し考えると,同期系にも解決すべき非同期の問題があることがわかる.たとえば,そのような機械がキーボードからデータを受理したり,別の機械を接続しなければならないとしたら,何が起こるかを考えよう.キーボードはデータを送る「正しい時間」について何も知らない.われわれはバッファ,つまり機械のクロックが正しい状態にあるときだけデータを機械に入れるようにする小さな箱を持たねばならない.データがあまりに遅く入ってきたときに,データをいま受理するか,または次のサイクルまで待つかという決定をしなければならない.決定をしなければならないという事実は,バッファが決定できないちょうどそのときに入ってくるデータによって,機械が動かなくなるという理論的な可能性があることを示唆する.これは魅惑的な問題で,よく考えてみる価値がある.(p. 200)