情報という言葉の起源・由来、「情報という言葉の語源とその周辺について」について

情報という言葉の起源・由来に関して、特定非営利活動法人パーソナルコンピュータ利用技術学会の常任理事(2016Marまで会長)をつとめておられる山下倫範先生による、「情報という言葉の語源とその周辺について」というメモ( http://yamashita-lab.net/yamasita-diary/information-origin.pdf )について。

このメモは Google などで検索するとすぐ見つかり、網羅性なども一見良いように見えるため、以前はウィキペディア(日)の記事などもこれを参考として挙げていたが、特に最後の段落の「関英雄先生が1954年に (シャノンの) "information" に『情報』の語を当てた」とする記述は、誤解を招きやすいことを注意しておきたい。

1950年代のこの周辺については『情報処理』 Vol. 46, No. 6 にある小野厚夫先生による「情報という言葉を尋ねて(3)」( http://id.nii.ac.jp/1001/00065360/ )によくまとまった詳細があるが、「関英男,喜安善市,室賀三郎あたりは1951年ころから積極的に information theory を情報理論と訳し.多くの紹介記事を書いた」とあるように、「情報」の語を使うことに積極的であった一派の頭目的存在ではあったかもしれないが、あたかも関先生一人が1954年に訳語をあてたかのような記述とはだいぶ雰囲気が異なる。

また information という英単語のままで記事を書いた代表とも言える高橋秀俊先生による文章でも、たとえば日本物理学会誌 Vol. 7, No. 1 (1952) の「Information Theory」( http://doi.org/10.11316/butsuri1946.7.8 )の冒頭近くに「題目の information theory の information とは何か? 普通日本語に訳して情報とか諜報などといっておりますが,大体そんな所で,とにかくあることについて知っているということを意味していまして,たとえば話された言葉,書かれた文字,図形などはみな何かの information を担ったもので,(略)」とあるので(字体などは現代風にしてあります)、information を訳すとしたら「情報」である、という意識はこの時点で普通のものであった、と読める(この文献では、冒頭のここ以外は全て information としてはいるが)。

この周辺については、情報処理学会の発足をはじめとした、日本では「情報」の語がかなり初期からさかんに使われた件と、「コンピュータ科学」「情報科学」「情報工学」それと「情報学」という語、という件についても私は追っているのだが、それらについては「情報」と「コンピュータ科学」にまとめた。小野先生が引用されている関先生の言葉にもあるように、通信屋とコンピュータ屋と、といったような学者やエンジニアのある種の派閥感(さらにその背景には、日本の場合は監督官庁の違いによる縦割り行政もある)というような少々ドロドロしたような背景もあり、なかなかに奥が深い。