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AM (中波) ラジオについて考える

別のページにまとめたもの

LA1050 の研究

レフレックスの研究

トランジスタラジオ

いろいろと自作のためにサイトを見てまわったのだけども、真空管ラジオに比べてトランジスタや IC によるラジオのための詳しい情報が少ないようなのでこういうページを作ってみた。

同調部

「トラッキングレス」

「トラッキングレス」という用語があり、本稿でも使用するが、正確にはトラッキングエラーレスである。

「ストレートラジオ用」と「スーパーヘテロダイン用」

物理的には f = 1 / (2 * π * √(L * C)) によって、どのような組合わせでも基本的には構わないわけだが、パーツ屋で手に入るラジオ用のバーアンテナコイルとポリバリコンには「ストレートラジオ用」と「スーパーヘテロダイン用」がある。ストレートラジオ用は 300〜350 μH のバーアンテナコイルと単連で 250〜300 pF のポリバリコンの組合わせ、スーパーヘテロダイン用は 500〜700 μH のバーアンテナコイルと同調側が 150〜200 pF の親子ないしトラッキングレスバリコンの組合せである。同じ大きさで親子バリコンにする都合上、スーパーヘテロダイン用は小容量なのであろう。このようにする必然性はないように思われる。

スーパーヘテロダインに改造する予定があるなら、スーパーヘテロダイン用のバーアンテナコイルとバリコンの同調側のみを使ってストレートラジオを作っても良いであろう (スーパーヘテロダインでは Q があまり高いとトラッキングエラーに対し敏感になり過ぎるので、多少ダルである必要がある。ストレートラジオ用に Q を特に高くしてあるものがあったとすると、比較して性能が落ちるかもしれない) 。

真空管ラジオには大容量のエアバリを使うのが「お作法」のようになっているが、これはストレイが比較的大きいため、バンドの上の方を合わせるためにコイルのインダクタンスが小さくなるので、バンドの下のほうを合わせるためには大容量が必要、ということなのだろうと思う。

バーアンテナコイルの入手性について

2012 年 8 月現在

「はじめてトランジスター回路を設計する本」 (2002 年発行の改訂版) には、スーパーヘテロダイン用のバーアンテナコイルが入手できないとあるが、現在はストレートラジオ用・スーパーヘテロダイン用ともに入手可能である。メーカーとしてはアイコー電子製とあさひ通信製。店頭・通販ともに流通しているようであるが、生産が継続されているかどうかはネットからは確認できなかった。

マルツではこんな感じ → http://www.marutsu.co.jp/ichiran/?SHO=021804 BA-670 がスーパー用、他はストレート用。PA-63R はタップだけで、アンテナコイルが分離してない。他、私の行く別の店には PA-63R と SL-45GT(これもストレート用) があった。

バリコンの入手性について

2009 年 2 月現在

店頭・通販共に、ストレートラジオ用・スーパーヘテロダイン用それぞれの CBM-223 と刻印されている (中国生産?) バリコンが流通している他、ミツミの PVC-1 PVC-2 も在庫があるところがある模様。ミツミは現在標準品と特注品を生産しており、標準品は AM のスーパーヘテロダイン用と FM 用の 2 連が入ったものがほとんどである (AM が 140pF の通常帯域用と 160pF のワイド (〜1750kHz) 用がある) 。他に 335pF 2 連 + FM 用 2 連という標準品がある。ミツミの現行生産品を扱っているショップはネットからは確認できなかった。「製品のご案内」には PVC-2KT-L という AM 用 2 連の製品も示されているが、現行ではない模様である。

CBM-223 という品番は、容量に関係なく共通のようで、容量 30p の単連と 2 連のものもある( 再生・バンドスプレッド用および FM 用?)店頭でパーツボックスから買う場合には、横からながめると中身がスカスカ(ステータ・ロータが 1 枚)なので一応識別は不可能でもないが、容量がわからない場合、ショップに確認するなど注意が必要。

AM スーパー用は品番 CBM-223F-1F4、ストレート用は CBM-113B-1C4 。

http://www.mitsumi.co.jp/Catalog/compo/varicon/index.html から資料その他が入手可能である。

バリコンのつまみ

電子部品店によっては簡単なつまみをセットにして売っていることもあるが、バリコンのシャフト側は円の両側が削れた形になっているのに対して、つまみのほうはかまぼこ形だったりして、結構ガタがあったりするので、チューニングのフィーリングを気にするならシャフトを延長して、ボリュームなど用のつまみを付けたほうが良いようである。

バリコンの曲線について

以下の議論はミツミのサイトから手に入る資料と、サイト「ラジオ・シャック」のバリコンの容量変化についてを参考にしている。

現在ミツミが生産しているバリコンの同調側は、EIAJ 1a カーブに沿っている (EIAJ の仕様書は見ていない) 。現行の規格としては JIS C 6461:1996 である。この曲線について調べてみると、不思議な点がある。

まず、差分をとってみると容量の大きい側の端で、わずかにだが S 字になっていることがわかる。具体的には、回転指度 70 から 100 の間についてで、以下のようになっている (指度 75 はこの計算には関係ないので省略する) :

100100
15.6
9084.4
16.5
8067.9
15.6
7052.3

また、サイト「ポータブル・ラジオのページ」の先人たちの知恵 コイル・パック(2)によれば、さらに古い規格である CLD ではバリコンの端 5% は余裕としていた模様である。よって、以下で述べる曲線の推定では、指度 90 と 100 の点については、無視することにする。

同様に、容量の小さい側の端についても、ミツミは指度をカッコ付きで (3) とし、JIS では 1〜4 の範囲にある回転停止位置としているが、0 になる点については考えないで進める。

ミツミの「使用上のご注意」によれば、この曲線は「ほぼ波長直線に近い」となっている。波長直線型であれば、グラフは放物線を描くので、2次式 ax^2 + bx + c にあてはめ (フィッティング) をおこなう。

指度のデータは 1a.txt、gnuplot でフィッティングをおこないグラフを描くスクリプトは graph1.txt である。次のような結果が得られる:

graph1

赤い線が推定で得られた放物線、青い十字が JIS の指定する点である。

フィッティングで得られるパラメータは次の通り:

波長直線型バリコンの曲線において、放物線の頂点は C がゼロ、波長がゼロで周波数無限大の点である (ふつうならば緑で示した曲線のように、放物線の頂点は可変範囲外にずれるはずである) 従って、この推定で得られた曲線によれば、1a の曲線は、fmax/fmin が無限大以上で設計された波長直線型バリコンの曲線だということになる。

緑で示した曲線は、fmax/fmin = 3.173 (520kHz〜1650kHz) として、(0, 0) と (1, 1) を通る波長直線型の場合の曲線である。

また、グラフから読み取るのは難しいが、規格の値と推定値は以下のようにパーセントのオーダーでズレがあり、規格の有効数字である 3 桁の精度は全くない。

指度JIS推定値
101.742.17
205.314.98
257.577.21
3010.29.99
4017.017.2
5026.226.6
6038.038.2
7052.352.0
7560.059.8
8067.968.1
9084.486.3

結論としては、規格の 1a の曲線は波長直線型ではなく、(3 桁の有効数字で指定していることから想像すると) 何らかの別のモデルに従って定められた曲線である、と考えてよいものと思われる。

2009 年 2 月 13 日、バリコンの曲線の項ここまで作成。

以下 2009 年 2 月 20 日加筆。

ある掲示板でおうかがいしたところ、次のような資料を教えていただいた。

「ラジオ技術」1952 年 5 月号に、JIS 制定を控え概要を示す記事がある。記事中で示されている曲線は JIS の 1a のものである。記事によると、従来規格として JES があったこと、新規格(JIS)は RMA(Radio Manufacturer's Association)の規格を参考にしたこと、などがわかる。新ラジオ資料館の資料室の「2 技術資料」の「コイル バリコンの規格統一の話(昭和27年)」である。

また、トラッキングレスバリコンの理論式については「スーパー・ヘテロダイン受信機」の6章にある。梅田さんのラジオ温故知新に PDF で公開していただいた。

2009 年 2 月 20 日ここまで加筆。

以下 2009 年 2 月 25 日加筆。

以下では示度 90 と 100 の点も考慮して計算をおこなった。


このような形状 (外側の円の中心は (-0.24, 0.22) 半径は 0.68、内側の円の半径は 0.20) の羽根の場合、次のように容量が変化する


あるていどそれっぽいようだが、誤差を小さくしようとすると内側の円が大きくなり現実的でなくなる。


また、このような形状 (外側の円の中心は (-0.27, 0.18) 半径は 0.72、内側の円の半径は 0.20) の羽根の場合、次のように容量が変化する


これは小さい容量の側での相対誤差が大きい。

2009 年 2 月 25 日この項ここまで加筆。

セラミックフィルタ

ムラタのセラフィルでは SFU455A と SFU455B (旧品番)が、AM ラジオ定番パーツである。ムラタはちょっと前に品番を付け直している。IFT と組み合わせる場合は SFU455B を使う。現行の品番は SFULA455KU2A-B0 と SFULA455KU2B-B0 である。行きつけのパーツ屋の棚に SFU455B が転がってたので入手。ムラタのパーツ検索サイトだと SFU455B の中心周波数が 462.0kHz とあるけど、なにかの間違いと思われる。

圧電イヤフォン

現在「クリスタルイヤフォン」として店頭にあるものは、ほとんどがセラミックイヤフォンである。潮解性など劣化するため、ロッシェル塩の結晶を使用したクリスタルイヤフォンは店頭ではみられない(製造されてないものと思われる)。どうしても必要であれば、OMさんが保存されているようなものを頒けてもらう等しかないと思われる。また、クリスタルイヤフォンとセラミックイヤフォンでは特性が違う。

湿気をきらうことから、シリカゲルを同封して密閉しておいたところ、劣化したという話もあるようなので、保存には極端な環境を避けることが重要なのかもしれない。

特性については、

以上のページが参考になる。

古いゲルマラジオの回路例等で、包絡線検波のための C と、並列負荷の R の定数が、クリスタルイヤフォンの特性に合わせたものになっていることに注意が必要である。

具体的には、古い回路例では C が 0.001μF、R が 500kΩ(470kΩ)〜1MΩ となっているが、セラミックイヤフォンに合わせて 0.01μF と 10kΩ(『トランジスターラジオ実践製作ガイド』より)とする。

もっとも CR なしで直結してしまってもたいしてかわらなく、ゲルマラジオはなかなか聞こえないわけであるが。

ラジオキット

以下は伝統的なラジオキットについてである。最近の DSP ラジオについては次の IC についての節を参照のこと。

ラジオキットの歴史

元々ラジオのキットというシロモノは、完成品のラジオには高額の物品税がかかるため、腕に覚えのあるアマチュアが自分で組み立てて安くあげるために、あるいは闇で(本来かかるはずの税を納めないのであるから一種の密造である)組立てて売る者のために、ラジオを部品で売ったことに始まる(売る方としてもキットなら税金はかからないし組立ての手間もなければアフターサービスも必要ないわけで、うまい商売であった)。

日本ラジオ博物館の「アマチュア組立ラジオの流行」によれば、ラジオの生産数と、聴取者調査における「自作」の回答数に、はなはだしい乖離があり、その間を埋めているのがおそらくそうして組まれて売買されたラジオだろう、ということである)

その後物品税の品目も見直され、また大量生産によってメーカーのほうが安く作れるようになり、安価にラジオを手に入れるための手段としてのキットはすたれることとなる。まだ真空管時代のことであった。

ラジオはトランジスタの時代となるが、教材用などとして、ラジオのキットは作られ続けた。「子供の科学」「初歩のラジオ」誌の巻末に科学教材社(元々が両誌の版元である誠文堂新光社の代理部(法人に付属して商品の取次ぎ販売をする部門)である)の広告が長年掲載されているが、そこに、ホーマー(共和製作所)、チェリー(明光電機)、エース(エース電気)などのブランド(括弧内はメーカー)のキットが並んでいた(他にご存じの方お知らせください)。

またキットの性質は少し違うが、中学校の技術科の教材メーカーからもいくつか教材キットが出ている。現役の教材メーカーには山崎教育システム、以前のメーカーにはフォアーランド電子がある。

あのソニーもいくつかキットを作っている。ジャンボトロンの恰好をしたものもあった。

ひところは、電子部品店ばかりでなく、一般のプラモデル等を扱う模型店などでも扱っていたほどに、ラジオキットは子供のホビーの一角を担っていた。チェリーはまだ現役のようである。

現行のラジオキット

科学教材社が国産キットを多く扱っている http://www.kagakukyozaisha.co.jp/list22/list22.html

他に、チェリーのキットは東京デバイセズも扱っている http://tokyodevices.jp/products/list.php?category_id=36

以下、主要な現行国産キットメーカー。チェリー以外はマルツあたりでもよく見掛ける( http://www.marutsu.co.jp/ichiran/?SHO=080202 )。

その他のキット取扱い店

ラジオ用 IC について

近年、半導体の品種の整理で、旧来の定番 IC であったものの製造終了が増えている。

一方で DSP ラジオ用 IC などが出回り始めており、進取的な愛好者は取り組んでみると良いだろう。

以下に各 IC の状況を示す。

LA1050 (互換)

2012 年 8 月現在

科学教材社扱い

が、2013 年 1 月現在オンラインカタログ( http://www.kagakukyozaisha.co.jp/list03/dps.html )に出ている。

aitendo 扱い

一般のパーツやラジオキットの他に、DSP ラジオモジュールをいくつか扱っている

スイッチサイエンス扱い

http://www.switch-science.com/products/list.php?category_id=157

ボリュームのカーブ

ボリューム用のバリオームには A カーブを使うことも多いが、最大音量がそんなに大きくない簡単なラジオでは、A カーブでは、よく使う大きな音量域で音量が大きく変化するので、むしろ使い辛いことがある。まず B カーブで作っておいて、A カーブのほうが良さそうなら後から交換する、とするのがいいかもしれない。

ゲルマラジオ

圧電イヤフォンの節も参照

真空管ラジオ

真空管ラジオについては参考になるページが他にたくさんあるので扱わない予定。

パディングコンデンサ

パディングコンデンサ(padding capacitor)とは、等容量 2 連バリコンを使ってスーパーヘテロダインのラジオを作る場合に、局発側に直列に入れて、チューニング範囲の全域でトラッキングエラーを一定の範囲内にするためのコンデンサ(バリコンが等容量 2 連で、L のインダクタンスだけで同調側と局発側をずらすと、トラッキングエラーはずれる一方になる。IF を 455kHz とすると短波なら同調と局発で周波数の比が小さいので問題は小さいのだが、中波(ないし長波)では比が大きいため問題となる)。ものとしては大容量のトリマコンデンサ。トラッキングレスの親子バリコンを使う、普通のトランジスタラジオの製作では気にしなくてよい。歴史的に「パッディング」「パッティング」、はては「バッテング」とも呼ばれることがある( http://www.geocities.jp/oldrxjp/RADIOhtml/old-part-3.html によると BATTING CONDENSER と部品に書かれた例もあるとか)

リンク集

順不同